忘れられない人
彼の背中を見つめていたらね、自分の存在がちっぽけに思えてきて‥惨めになってきて‥これ以上、ここにいたくないって思ったんだ。だから、立ち上がって何も言わずに出口に向かおうとしたんだ。
そしたらね‥
「どうして帰るの?」って言いながら、後ろから私を抱きしめてきたの。
「どうしてって‥テレビを見てるなら私‥」
話の途中だったのに、私を180度回して、今度は正面から抱きしめたの。
さっきからね、私の頭の中には「どうして」って言う言葉がグルグル回っていたんだけど‥でも、ようやく答えを見つけることが出来たんだ。彼もね、私と同じ気持ちだったの。
それが分かったらね、何だか嬉しくて安心して‥突然涙が出てきたの。その涙をね、彼が優しくふき取ってくれて‥そして‥
そのまま私を抱き上げてベッドまで運んでくれたの。
初めて男の人に抱かれるわけじゃないのに‥初めてのとき以上に緊張していたの。そんな私の気持ちを読み取ったのか、彼は
「大丈夫。俺がついてるから大丈夫」って言ってくれた。
ここまで話すと、私は一度目を瞑り、現実と過去を入れ替えた。
『私を安心させてくれるために、龍二が言ってくれる言葉ね‥彼も私の為に言っていた言葉なの。ごめんね‥私‥』
『イヤ、陽菜は悪くない。そうか‥リュウジって奴も言ってたのか‥そうだったのか‥』
龍二は凄く落ち込んでいた。
龍二の傍に私はいたのに‥声をかけることが出来なかった。何て話しかければいいのか‥こんなとき、どうすればいいのか分からなかった。
傍にいるべきか、この場から離れるべきなのか‥それすらも分からない。
そんな状況の中、龍二は思いつめた感じで重い口を開いた。
『そうか‥リュウジって奴とは‥そうか。でも、付き合ってなかったんだよな?』
『う、うん‥』
『付き合おうとか言われなかったのか?』
私は縦に首を振った。そして
『私もね‥言わなかった。怖くて言えなかったの。自分の気持ちをね‥彼に伝えることが出来なかった。
彼の気持ちを確認する方法は、一緒にいた時間と‥それからお互いの体温を感じているとき‥だったの』
それを聞いた龍二は一度、私を見てから再び下に目線を落とした。
そしたらね‥
「どうして帰るの?」って言いながら、後ろから私を抱きしめてきたの。
「どうしてって‥テレビを見てるなら私‥」
話の途中だったのに、私を180度回して、今度は正面から抱きしめたの。
さっきからね、私の頭の中には「どうして」って言う言葉がグルグル回っていたんだけど‥でも、ようやく答えを見つけることが出来たんだ。彼もね、私と同じ気持ちだったの。
それが分かったらね、何だか嬉しくて安心して‥突然涙が出てきたの。その涙をね、彼が優しくふき取ってくれて‥そして‥
そのまま私を抱き上げてベッドまで運んでくれたの。
初めて男の人に抱かれるわけじゃないのに‥初めてのとき以上に緊張していたの。そんな私の気持ちを読み取ったのか、彼は
「大丈夫。俺がついてるから大丈夫」って言ってくれた。
ここまで話すと、私は一度目を瞑り、現実と過去を入れ替えた。
『私を安心させてくれるために、龍二が言ってくれる言葉ね‥彼も私の為に言っていた言葉なの。ごめんね‥私‥』
『イヤ、陽菜は悪くない。そうか‥リュウジって奴も言ってたのか‥そうだったのか‥』
龍二は凄く落ち込んでいた。
龍二の傍に私はいたのに‥声をかけることが出来なかった。何て話しかければいいのか‥こんなとき、どうすればいいのか分からなかった。
傍にいるべきか、この場から離れるべきなのか‥それすらも分からない。
そんな状況の中、龍二は思いつめた感じで重い口を開いた。
『そうか‥リュウジって奴とは‥そうか。でも、付き合ってなかったんだよな?』
『う、うん‥』
『付き合おうとか言われなかったのか?』
私は縦に首を振った。そして
『私もね‥言わなかった。怖くて言えなかったの。自分の気持ちをね‥彼に伝えることが出来なかった。
彼の気持ちを確認する方法は、一緒にいた時間と‥それからお互いの体温を感じているとき‥だったの』
それを聞いた龍二は一度、私を見てから再び下に目線を落とした。