忘れられない人
『それからも、何度か家に行ったってことか?』

‥‥

答えを言うのに少し戸惑った。

「違うよ」って言う事が龍二の為になるのか。それとも本当の事を言えばいいのか。

迷ったけど、龍二は私の全てを知りたいって言ってくれたことを思い出し、本当の事を言うことに決めた。


『‥うん。何度か‥』

『そうだよな‥。お互い思い合ってる仲だったら当たり前か』

龍二は苦しそうに、それでも私に心配をかけまいと必死に笑って見せた。そんな姿がよけい私の心を追い詰めていった。

これ以上龍二と一緒にいたら‥龍二を苦しめるだけ。私は静かに立ち上がって、その場から逃げ出そうとした。

『ちょっと待てよ!!』

龍二は私の腕を強く掴み、無理やり元の場所に戻した。


『どうして?これ以上私と一緒になんていたくないでしょ?』

私は、どうして引き戻されたのか分からなかった。

『確かに‥聞くんじゃなかったのかもって後悔している。でも、これが陽菜の歩んできた人生であって、誰も知らない真実なんだろ?それに‥‥まだ、2人の全てを聞いてない。こんな絶頂の中にいて、どうして離れ離れになった?俺には、どうしても分からない』

『そ、それは‥』

私は龍二の目から視線を外した。

『頼む。俺の事を少しでも想ってくれているのなら、その先の話を聞かせてくれないか?』

龍二は潤んだ瞳で私を見てきた。

今、一番辛い想いをしているのは龍二なのに‥泣きたいのは龍二の方なのに‥決して私の前では泣かなかった。

そんな姿を見て、私はその続きを話すことにした。
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