忘れられない人
『まず一つ目だけど‥その‥離れ離れになってから連絡は取ってないのか?』

『えっと‥逢おうとか、逢いたいって言う連絡はしてないよ。ただ、毎年お互いの誕生日にお祝いメールは今も送ってるよ‥』

『そっか。じゃあ、もう一つな。俺とそいつ、どっちが好きだ?』

『へっ??』

『だから、俺とそいつのどっちが好きなんだよ?』

『それは‥』

私は、すぐに答えることが出来なかった。今、付き合っているのは龍二なのに‥リュウジとは全然逢っていないし‥過去の人なのに‥

それなのに私は迷っていた。

たぶん、思い出の箱を開けていなければ即答できた質問だけど‥今の私は‥


そんな時、龍二が私を無理やり抱こうとした。
始めのうちは抵抗していたけど‥これで龍二の気が済むのなら‥

そう思い、私は龍二を受け入れた。


次第に呼吸が荒くなり、私は「りゅうじ」と泣きながら叫んでいた。すると龍二の手が止まった。


『今の「りゅうじ」は、俺を思ってなの?それとも‥』

そんなの私にも分からなかった。
私は、どっちを思って叫んだんだろう‥??


龍二は、しばらく黙って私を見つめていた。私も龍二の目を逸らさなかった。すると、龍二は私のおでこに軽くキスをして、私から離れた。


『‥確かに俺といても、上の空と言うか‥誰か他の男の事を思っているんじゃないかって薄々感じてはいたんだ。でも、まさか‥こんなに深く想っていたなんて思いもしなかった。正直、今困惑している‥なんて言ったらいいのか‥』


私は何にも言えなかった。

龍二が私の髪を触る仕草、言葉遣い、それに名前‥


私は、いつしか龍二とリュウジを重ねていたのかもしれない。


ここに居てはいけない‥そう思い、バッグを手に取り龍二の部屋から出ようとした。すると

『決着‥つけよう!!』

そう龍二が叫んだ。


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