忘れられない人
『ホント‥久しぶりだな。何年ぶりだろう?』

『最後に逢ったのは、私がまだ高校生のときなので‥えっ!?どのくらい前だろう?』

ダメだ。
緊張してて、簡単な暗算すら出来ないでいた。


お互い何を話せばいいのか手探り状態が続いた。私は部屋の中で電話をしていたので、とりあえずベッドの上に座った。

リュウジは何処に居るんだろう?
耳を澄ませてみると「ヒュー」という風の音が聞こえてきた。


『い、今どこにいるの?』

『今は‥駅』

『駅って。何処かに行っていたの?』

『あ、あぁ~‥ちょっと仕事の関係で海外に。それで、携帯が使えなくてさ。ごめんな連絡遅くなって』

『う、ううん!!そんなこと‥。ねぇ、寒くない?大丈夫?』

『それは平気』

よかった。少し安心した。
それにしても海外に行ってたって‥仕事大変なんだな。

社会人になってみて、仕事の大変さとか少しなら共感することができた。まだ高校生だったあの頃よりは‥


『それでメールに書いてあった、話したいことって何?』

『あっ、うん‥』

どうやって言えばいいんだろう?


でも、今帰ってきたばかりだし‥疲れてるから今度にしようかな。また日を改めて‥

そんな事を考えているとリュウジが話し出した。


『俺さ、コンビニに用事があるんだけど』

『えっ?コン‥ビニ?』

『そう。タバコきれちゃって。2時間後に外で吸ってるから』

『えっ?それって‥』

『そういうことで。じゃあな』


一方的に自分の意見だけを言って、電話が切れた。


『ねぇ、期待してもいいのかな?あそこに行けば‥リュウジに逢えるの?』

約束の時間が近づくにつれて、私は動揺を隠せないでいた。



『龍二に知らせないと!!』

そう思い、携帯を手にした。
頭では分かっているの。今すぐ逢えることを龍二に知らせないと。場所と時間を‥

でも
体は拒絶していた。3人ではなくて‥2人で逢いたい‥



結局私は、龍二に連絡をしないで家を飛び出した。
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