忘れられない人
このままって‥
龍二に抱きしめられたままってこと?しかも、こんな大勢の前で?大注目の的だよ‥
私には選択の余地もなく、龍二の望みどおりにした。そんな素直な私の行動を見て

『いい子いい子』

と言いながら満足そうだった。
私は「今度は私の番だからね!!」と龍二に念を押して言って少し離れた。


龍二から離れたら、なんだか急に寂しくなってきたので、こっそり後ろの方で手を繋いだ。

『いいよ‥ね?』

すると、繋いでいた手を一回離し

『これなら許すけど?』

そう言って、手を絡めてきた。
さっきの目とは打って変わって、今度は真剣な目だった。そんな龍二の目を見たら心臓の鼓動が早くなってきた。

「イヤとは言えない。でも‥少し恥ずかしい。でも‥この手は離したくない!!」

私は首を縦に振った。

『良かった』

龍二は子どもみたいにはしゃいでいた。私ばかり振り回されているのが少し悔しかった。
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