忘れられない人
目的地には、約束の時間より30分も早く着いた。緊張のし過ぎなのか、凄く喉が渇いていたので、一度車から降りて店の中に向かって歩き出した。途中、横目で喫煙所を見たけど、誰もいなかった。

『よかった‥』

思わず心の中の声が外に出ていた。私は慌てて自分の口を両手で押さえた。そして、誰にも聞かれていなかったかどうか、周囲を確認した。私の周りには人一人として見当たらなかった。

自分の気持ちを落ち着かせてから、店の扉に手を当てた。


中に入ると、商品の陳列場所が昔と変わっていなかったので、飲料水がどこにあるのかすぐに分かった。

始めは、自分の大好きなミルクティーだけを手にしてレジに向かった。でも、レジを待っているとき、ふと缶コーヒーが視界に入った。

「そういえば‥これって‥」そう思い、缶コーヒーも追加した。


商品が増えたので、レジの人はシールではなく袋に入れてくれた。私は、お釣りを募金箱に入れてから店を出た。すると、正面には1台の車が止まっていた。店に入るときには見なかった車‥

「もしかして‥!!」私は喫煙所を見た。すると誰かがタバコを吸っていた。ここからでは、リュウジかどうか確認は出来ない。でも‥もしかしたら‥


私は、吸い寄せられるように近づいて行った。
あと数歩で彼の顔が見える。そんな時、私のビニール袋が公衆電話の角に擦れて音が鳴った。さっきまで、反対側を向いてタバコを吸っていた人は、私のいる方に振り向いた。
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