忘れられない人
『今さら‥って思うことかもしれない。でもね、私にとっては凄く大切なことなの。私の質問に正直に答えてくれるかな?』

そう言い終わったとき、リュウジは呆然としていた。

たぶん‥
今さら何言って来るんだよ?って心の中で思っているのかもしれない。そんなの百も承知の事。でも今は、形振り構っている場合ではない。

今しか‥聞くチャンスはないの。

勇気を出せ、陽菜!!


そう自分に言い聞かせてからリュウジに向かって問いかけた。


『私がまだ高校生だった頃。つまり、私のバイト先に来てくれていた頃‥私の事‥どう思っていたの?』

『はっ!?』

『えっと~‥そんな深く考えなくてもいいよ。ずいぶん前の事だし、今さらだよね?でも、ずっと気になってて‥今でも、どう思っていたのかな?って。

私の事を思って嘘言わなくていいからね。もう大人なんだし、ちゃんと受け止める自信はあるの。だから正直に言ってくれるかな?あの頃の気持ち‥』


私は少し、身を乗り出してリュウジを見た。リュウジは椅子に深く座りなおし「タバコいいか?」と私に聞いてきた。私は頷き、リュウジはタバコに火をつけた。


『ふぅ~‥あの頃の事か。懐かしいな‥』

それを言ってから黙り込んでしまった。

頭の中で整理してくれているのかな?
リュウジは優しいから、私が傷付かないように、この後気まずくならないような言葉を考えているのかな?

私はそんな事を思っていた。


次にリュウジが話し出したのは、1本目のタバコを吸い終わって、2本目に火をつけたときだった。
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