忘れられない人
今の言葉‥
私も龍二に言われた。龍二も、その女の人も‥どんな気持ちだったんだろう?やっぱり、相手を恨むよね?だって大切な人を奪われたんだもん。しかも心ごと。

奪い返したい!!って思うよね?でも、そんなことしないのは‥やっぱり大人だからなのかな?それとも、自分を守るため?どっちなんだろう。

ふと相手の心理を考えていた。でも考えれば考えるほど泥沼に嵌り、自分は最低な事をしたんだと思い知らされた。


私は、どうしていいのか分からず、目の前にあった水の入ったグラスを時計回りに回していた。グルグル回っている水を見ていると、現実から目を背くことができた。

すると、私の気持ちに気付いたのか、リュウジは明るく振舞って話をしてきた。


『でもな、俺は後悔なんてしていない。お前と知り合えたこと、それからお前と一緒に過ごした時間を』

『私は‥』

『ちょっと待て!それ以上言うな』

私が話そうとしたのに、リュウジは止めた。どうして私の気持ちは話させてくれないんだろう‥??不思議でしょうがなかった。


『俺が先に言う』

そう言ってタバコの火を消した。
ずっとタバコを見つめていたのに‥それがなくなった今、リュウジと目が合ってしまった。そして‥一気に緊張が頂点まで達した。
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