忘れられない人
『俺の気持ちに気付いていると思うけど‥

俺は、お前が好きだ。たぶん‥始めて見た時からずっと。あの頃も、女がいなかったら俺から連絡先を教えていたと思う。今、彼氏がいると聞いても‥俺の気持ちは変わらない。あの頃と変わらない想い。

あの頃、お前は俺の事をどう想っていたのか分からなかった。知りたかった。でも、本心を知るのが怖かった。だから‥気持ちを伝えることに臆病になっていた。

それでも、逢いたいという気持ちは隠せなくて2人で遊んだ。キスをした‥そして‥お前を抱いた。心も体も一つになれたと思った。これからも、この幸せが続くんだと思っていた。でも‥

仕事の都合で異動が決まった。本当は一緒について来て欲しかった。ずっと俺の隣で笑っていて欲しかった。そんな事、俺の我儘だって事くらい自覚していた。


そんな時、お前が進学する事が決まったという事実を知った。行くなって言いたかった。でも‥そんな事言える立場じゃないことくらい俺にも分かっていた。

だから‥俺はお前に想いを伝えずに離れた。俺の気持ちを知ったら‥お前は優しいから、ずっと引きずると思った。

でもな、本当はずっと俺だけを思っていて欲しかった。お前の心を俺いっぱいにしたかった。でも‥近くにいてやれないのに、辛い思いはして欲しくなかったんだ。ごめんな‥矛盾しているよな?』

『そんな事‥』

私は下を向いて大きく横に首を振った。そんな私を見て、一呼吸してからリュウジは話し出した。
< 49 / 140 >

この作品をシェア

pagetop