忘れられない人
待つこと40分。
ようやく席に着くことが出来た。私たちは4人がけのブロック席に、ゆったりと座った。周りを見渡すと、お客さんは私たちを除いて10人くらいしかいなかった。

『人‥だいぶいなくなっちゃったね』

私はメニューを見ながら龍二に言った。龍二はメニューを一度机の上に置いて、店内を目で一周した。そして「そうだな」と低い声で答えた。私も龍二も少し疲れていた。

『何食べるか決まった?』

私は持っていたメニューから目を離し、龍二を見た。

『俺、ビールでいいや』

『ビール飲むの?じゃあ、帰りは誰が運転するの?』

『陽菜(笑)』

『もう!!』

たまにあるんだよね。自分勝手というか、子どもみたいというか、わがままというか‥
でも、そんな所も許してしまうなんて‥彼に相当嵌ってるって事なのかな??

私は従業員を呼び注文をした。


『‥かしこまりました。少々お待ちくださいませ』

一度頭を下げてからキッチンの方に下がって行った。


『陽菜、そんなに食べるの?太るぞ(笑)』

龍二!!

『いいの!!全部龍二の奢りだし』

私は頬を膨らませた。龍二は「ふ~ん」と言いながら笑っていた。



10分後、注文した品物が机の上に並べられた。

『注文は以上でおそろいでしょうか?』

『えっ?あっ、はい‥』

『では、ごゆっくりとお楽しみください』

従業員は下がって行った。


私は、机に並べられたモノが想像以上に多かったので呆気にとられていた。


『全部、食べられるのか?』

龍二はニヤニヤしながら私を見てきた。

『一緒に食べよう‥ね?食べてくれなきゃイヤ』

欲しいモノを強請る時のように駄々をこねた。龍二は「陽菜の頼みなら仕方ない」と言って頬張って食べていた。本当はお腹ぺこぺこだったんじゃないの?私は、そう思ったけど、言ったらひねくれちゃうと思ったので黙っていた。

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