忘れられない人

突然の異動

家の車庫に車を止めて家に入ろうとすると、パッシングをされた。「一体誰なの?」私は恐る恐る、光の方へ近づいて行った。すると車から出てきたのは‥龍二だった。


『龍二!!どうしたの?こんな時間に』

『どうしたって、携帯に電話しても繋がらないから心配して家まで来たんだよ』

『繋がらないって、そんなはずないよ。だって充電ちゃんとしてあるもん』

私は、バッグから携帯を取り出して画面を開いた。


『あれ?電源が入ってない‥』

『だろ?』

『ごめんね。心配してくれてありがとう。でも、こんな時間まで待っててくれるなんて‥何かあったの?記念日じゃないし‥誕生日でもないよね?』

『あっ、うん‥ちょっと話があって』

『話??』


何だろう?
えっ!もしかして‥リュウジと逢っていたことがバレたとか?それで別れ話をしようとしているのかな?そんなのヤダよ。先に謝ろう!!

『ごめんなさい!!』

私は頭を深々と下げて謝った。

『ちょっ、そんなに怒ってないから頭上げて。次は携帯の充電忘れなければそれでいいから』

龍二は私に向かって微笑んでくれた。


えっ!?じゃあ、話って何だろう??私は思い切って聞いてみた。

『私に話って‥何?』

『うん。外寒いし、車の中で話さないか?』


私たちは龍二の車に乗った。暖房を入れてくれたので少し眠くなってきた。でも、龍二が真剣な表情をしていたので私も眠いのを我慢した。

そういえば!!
さっき、コンビニで買った缶コーヒーの事を思い出した。


『冷めちゃったけど、これでも飲んで落ち着こう?』

私はそっと差し出した。龍二は「ありがとう」と言って一口飲んだ。飲んだ後の表情は、さっきよりもは落ち着いて見えた。
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