忘れられない人
『おっ、窓の外を見てみろよ!!』

突然リュウジが言ってきた。私は言われたとおり、部屋の窓から外を見た。

『うわぁ~綺麗』

丁度、日が昇るところだった。


『だな。こんな風景、久しぶりに見た』

『私だって。こんな時間まで電話したのだって久しぶりだもん(笑)』

『俺も(笑)今日も仕事だろ?』

『あっ、うん‥そろそろ支度しなきゃ』

『そうだな』

『じゃあ、電話切るね』

『ちょっと待て!!』

電話を切ろうとしたら、リュウジに止められた。


『どうしたの?』

『陽菜、お前に何があったのか分からない。でも、俺を頼ってくれた事、本当に嬉しかった。悩みを聞いてやれなくてごめん!!話さなかったって事は‥彼氏の事で悩んでたんだろ?俺はお前と違って鈍感じゃないから、そのくらいの察しはつく。

あんまり一人で抱え込むなよ?苦しくなったらいつでも話くらいなら聞いてやるから、いつでも電話しろ。いいな!!』

『リュウジ‥』

『本当は今日誘おうと思ったけど‥しばらく逢うのは我慢する。俺に逢ったら余計、陽菜が苦しむだけだと思うから‥落ち着いたら‥陽菜から電話しれくれたらいいな』

『今‥陽菜って言った。私の名前覚えてたんだ‥』

『おい、そこかよ!!違うだろ?』

『ごめんって(笑)
‥いろいろ心配かけてごめんなさい。それから‥ありがとう。二週間後に‥電話します』

『分かった。その時は、お前の気持ちも聞けるって事でいいのか?』

『うん‥』

『そうか‥じゃあ、二週間後に‥』

『おやすみなさい』


私は電話を切った。


『二週間で気持ちを整理‥しないと‥』

私は、もう一度窓の外を眺めた。


『あっ!さっき「おやすみなさい」って言っちゃった!もう朝なのに‥まっ、いっか』

私は大きく背伸びをして、会社に行く準備を始めた。
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