忘れられない人
彼と触れ合ったことで再び涙が出てきた。


『リュウジの事‥忘れたことなんてなかった‥凄く逢いたかったよ!!』

『うん』

リュウジは一度私を離し、今度は自身の胸に引き寄せた。リュウジの心臓の音と体温が伝わってきて、それが凄く心地よかった。

私は、そのままの状態で続きを話し始めた。


『この前は、久しぶりに思い出のこの場所で逢えて本当に嬉しかった。それから、夜中にリュウジの声が聞けて‥嬉しかったし、気持ちを落ち着かせることが出来たよ。本当にありがとう。

あれから何の連絡もしないで、急に今日この場所で逢いたいなんて言ってごめんなさい‥それから‥』

『「ごめんなさい」はもう禁句な。さっきからお前、謝りすぎ』

『うっ。ごめんなさ‥!!』

私は慌てて口を塞いだ。すると、リュウジが大きくため息をしたのが分かった。


『次に「ごめんなさい」って謝ったら無理矢理キスするぞ(笑)』

冗談半分で言った事だって分かっているのに‥顔が火照っていくのが自分でも分かった。こんなに密着していたら‥私の心臓の音も聞こえちゃうよ。考えれば考えるほど深みに嵌っていった。

私の顔なんて見えていないはずなのに、リュウジは笑っていた。

『なっ、なんで笑ってるの?』

『イヤ、久しぶりにからかうと面白いな~っと思って(笑)』

『酷い!!私、今凄く‥』

リュウジの腕の中から逃げようとした。でも、男の人の力を振り払うことなんて出来なかった。

『俺も同じ』

『へっ!?』

『俺も今‥お前と同じ気持ちなんだよ』

『それって‥』

私と同じで緊張してるって事?少し、顔が赤く染まっているって事なの?そんな事を心の中で思っているとリュウジが話しかけてきた。

『だから、このまま大人しくしてくれね?』

優しくお願いされたので思わずその要求を呑んでしまった。言われたとおり素直になった私を見て失笑していた。反撃しようとしたけど、また同じ事の繰り返しになると思ったので止めた。
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