忘れられない人
『ねぇ、リュウジ‥私ね、ずっとあなたの気持ちが知りたかったの』

『うん‥』

リュウジは頷いた。そして、少し間をおいてから再び口を開いた。


『それで?』

『‥ずっと‥私の気持ちを伝えたかった。聞いて欲しかったんだ‥』

当時の想いが蘇ってきて、少し声が震えてしまった。

『私ね‥今思い返しても、きっと一目惚れだったと思うの。気付いていなかっただけで、タバコの事で話しかけてくれたときから‥ずっと好きだったんだと思うんだ。だからバイトも続けられた。頑張れた。だって、ここにいればリュウジに逢えると思ったから。勇気を出せば‥話しをすることも出来ると‥思ったから‥

だからね、勇気を振り絞って話しかけたり‥アドレスを書いた紙を渡せたり出来たんだと思うの。今だから言うけど‥本当はね毎日メールとかしたかったんだよ?でも、嫌われたくなかったから私から連絡を取るのを控えたの。

そうそう、メールは全部保護してたっけ。嬉しくて嬉しくて‥(笑)


あなたと食事に行ったり、映画を観に行ったときは本当に嬉しかったよ。「彼女」っていう立場じゃなくても‥周りからそう見られているかもって思うだけで、何だかあなたを独占しているみたいで‥その時はそれだけで満足していた。

でもね‥逢う回数が増えると‥手を繋ぎたいとか抱きしめて欲しいとか‥そういった欲も出てきたの。そういった感情って、男の人だけじゃないんだよ?好きな人と一緒にいるときは女の人だって思うことなの。

カラオケでキスしたときは、もしかしたら‥って思った。でも、罰ゲームでしたことだったから遊ばれてるんだと思った。それでも私は好きだったから‥‥』


罪悪感を感じたのか、リュウジの手が緩んだ。その隙を見て、私はリュウジから離れて横に並んで続きを話した。
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