忘れられない人

ページのトップには「彼氏とお揃いの物自慢！！」というタイトルが書いてあった。俺は雑誌に目を向けたまま話した。

『陽菜さ～俺とお揃いの物を付けるとしたら何がいいんだ？指輪？』

『指輪なんてそんな高価なものじゃなくていいの。私は‥って、えっ！？』

陽菜が驚いて俺の方を向いたのが視線で分かった。でも、さっき一人ぼっちにさせられて寂しかったから少し意地悪してやろうと思い、顔を上げなかった。

『私は何？‥ってか、その前にミルク零れてるんだけど』

『えっ？本当だ。どうしよう‥布きん布きん』

陽菜が挙動不審になってるのが見なくても分かる。俺はそっと箱ティッシュを渡した。

『ありがとう』

そう言って慌てて机の上に零れたミルクを拭いていた。いつもの俺ならこの辺りで機嫌を直して手伝ってやるけど、もう少し‥俺だって寂しかったっていうのを分かって欲しかったから冷たく当ってしまった。

『それで俺とのお揃いは何がいいんだ？』

『あっ、うん‥‥‥』

俺の声から不機嫌さを察したようだ。そろそろ許してやろうと思い顔を上げると陽菜が泣いていた。

『えっ！？何で？何で泣いてるんだ？』

訳が分からず、シドロモドロになってしまった。


『だって‥龍二が‥全然わた‥私‥を見てくれない‥から‥』

そう言いながら俺の服の袖を握る手が震えていた。「完敗‥だな」俺は陽菜を引き寄せて強く抱きしめた。

『ふへっ！？』

その声に俺は笑った。

『何だよ今の声(笑)』

『だって‥私の事‥怒ってるんでしょ？ミルク‥零したから‥』

はっ？？
俺は陽菜の肩を掴み、陽菜から離れた。

俺が不機嫌だったのは、俺より雑誌を選んだからであって‥だから単なる俺のヤキモチであり‥別に陽菜が悪いわけではなくて‥‥って、あー何不安にさせてるんだよ‥俺は子供か。

「ごめん」ということが言えなかったので、陽菜の頭に短いキスをして頭をポンポンと軽く叩いた。


『怒ってないよ』

『‥ほん‥とう？』

『本当だよ』

微かに笑って言うと陽菜が俺に抱きついてきた。俺は単純だから途端に上機嫌になった。