忘れられない人
『お揃いのストラップ‥付けるか?』

『い、いいの?だってストラップは邪魔になるから嫌いって言ってたじゃん!?』

『ん~‥でも何事も経験かなと思ってさ』

本当はお揃いの相手が陽菜なら良いとずっと前から思ってたんだけど、これは内緒にしておこう

『嬉しい!!じゃあ今から選んでくるね』

そう言って俺の腕の中から離れた。「逃がしてやるか」咄嗟にそう思い、陽菜の左手を掴んだ。

『ど、どうしたの?』

陽菜は不思議そうな顔で俺を見てきた。

『今から行くのか?』

俺は少し寂しそうな声で言った。

『えっ!!うん‥』

『本当に今から?』

『‥ん~‥』

陽菜は少し悩みだしていた。よし、もう一押し!!俺はとっておきの切り札を使った。


『行くな!俺の傍にいろ!!』

さっきまでの寂しそうな口調や目とは打って変わって、強く鋭い視線を送った。そんな俺の態度に陽菜の選択肢は一つしかなかった。

『わ、分かった。龍二の傍にいるから』

今度は俺の勝ちだ。掴んでいた陽菜の左手を離しソファーを叩いた。


『そこに座れってこと?』

俺は笑顔で頷いた。

『じゃあ~隣にお邪魔しま‥‥あっ!!』

陽菜は、足元に置いてあった箱ティッシュに躓いた。
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