忘れられない人
『やっべ。完全に怒らせちまった』

自分のとった行動を反省しながら後片付けをしてた。すると、口紅のついたコーヒーカップが目に留まった。「‥何焦ってるんだろう。ごめんな」コーヒーカップに話しかけたが、もちろん返事を返してはくれない。

「はぁ~‥」大きなため息をついていると、ガチャっと部屋の扉が開く音が聞こえた。


『あ、明日‥この部屋でデートするから‥私がイイよって言うまで‥部屋にいてね』

『‥へっ?』

まさか部屋から陽菜が出てくるなんて思ってもいなかったから、間抜けな返事しか出来なかった。

『は、話はそれだけだから‥おやすみ!!』

バタン
陽菜は勢いよく部屋の扉を閉めた。

もしかして‥怒ってるんじゃなくて緊張してるのか?だからあんな態度を‥??

『ハ‥ハハハ。可愛いじゃん』

しばらく笑いが止まらなかった。



後片付けを再開しようと立ち上がったとき、陽菜が見ていた雑誌が開いたままだった。雑誌を手に取ると「154ページ」が簡単に開けるように角が折り曲げてあった。

『そんなにお揃いのが欲しかったのか。だったら言ってくれれば‥‥ん!?』

よく見ると折り曲げ方が外側だった。「154ページ」を見たいなら普通なら内側に折るよな?俺は1ページ前を捲ってみた。そのページに載っていたものは‥‥。

『そっか。陽菜が欲しいものって「これ」だったのか。そうだ!』

俺は時計を見て時間を確認した。今から家を出ればまだ間に合う!!机の上に置いてあった車の鍵を持って陽菜の部屋の前に向かった。


コンコン
『陽菜?俺、今から出かけてくるから。出来るだけ早く帰ってくるけど、何時になるかは約束できない。‥先に寝てていいからな。
じゃあ、いってきます』

急いで靴を履いて家を飛び出した。


日付が変わってから家に戻ると、片付けの途中だったコーヒーカップが食器棚に戻されていた。プレゼントを片手に、陽菜の部屋の扉をノックしたが返事がなかった。もう寝たんだと諦め、俺もシャワーを浴びたらすぐに自分の部屋に入って寝た。

明日の陽菜の笑顔を考えていたら熟睡して眠れた。
< 89 / 140 >

この作品をシェア

pagetop