忘れられない人
15分後。
今の体勢に少し疲れてきた。

『ねぇ、龍二。そろそろ私を解放して?』

『じゃあ、俺の事スキって言ったら解放してあげる』

そういえば私‥龍二にスキって言った事あんまりないような??
面と向かって気持ちを伝えるのが少し照れくさかった。


『龍二の事がスキ‥だよ。だから解放して?』

顔を真っ赤にして言った。私は約束どおり言ったのに、何故かさっきよりも強く抱きしめられた。


『ちょっ‥』

『俺さ、前から聞きたいことがあったんだよね』

声のトーンが急に低くなった。真剣モードに入ったようだ。

『聞きたいことって何?』

龍二は私の手を取り、自分の手と絡めてきた。


『俺と付き合う前の男の事。元彼の事なんて関係ないと思ってたけど、俺‥陽菜の事本当に好きなんだ。だから陽菜の事、全部知りたい!教えてくれないかな?』


私は戸惑っていた。
昔の事言ったら私の事‥嫌いになるんじゃないかと思って。聞かれたら隠さず答えようと自分に言い聞かせていた。でも、まさかこんなタイミングで聞かれるなんて‥

昔の男か‥。
元彼の事なら聞かれれば何でも話せるけど、昔好きだったあの人の事は思い出したくなかった。
思い出したら私‥‥


やっと忘れられたあの人への淡い気持ちまで思い出してしまいそうで怖かった。


でも、私は決意した。
龍二には何でも話そう!!

私は、龍二の手を強く握り返した。


『何でも聞いて。私‥答えるから』

『ありがとう。タバコ‥吸っていい?』

私は縦に首を振った。
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