シチリアの空
「噂をすれば…ってやつだな」

大きくため息をついた店長は
あたしから少し離れた場所に行き、
電話に出る。


…副社長なの?

…副社長なの??!!

いつもと違う、店長の丁寧語に
あたしは確信した。

「昨日、お店いらっしゃいました?
バイトの子から聞いて、もしかしたら…と思って」

そう店長は話し出した。

何食わぬ顔で。

ああ…あたしこの職場が好きだったのに…
そりゃたくさん失敗もして、
向いてないかもって思って悩んだ日いっぱいあったけど…

それでも頑張っていこうって思ってたのに…
もうクビ、か…

「はい、今すぐ近くに居ますよ。」

そう副社長に告げた店長は
頭の中"クビ"という単語でいっぱいのあたしを手招く。

「お前に変わってくれって、副社長」

あたしは

もう終わった、と思った。
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