シチリアの空
「あのっ!」


伸びっぱなしだと思われる髪の毛に、帽子に、眼鏡。

そしてお洒落なのか何なのか分からない、アゴのヒゲ。


怪しげな男はあたしの目の前に立っていた。


「はい…?何ですか?」



恐る恐る聞くあたし。

すると男は更に近付いて来る。


「――えっ!?」


勢い良く肩を掴まれ、思わず声が出る。

一体何!?


「僕をここで見た事、誰にも言わんといてもらえます?」


…は!?


「とりあえず、今は意味分からないと思いますがお願いします!」


関西弁の男は、早口でそれだけ伝えると
走り去ってしまった。


言葉の意味が全く理解出来ないあたしは
開いた口をしばらく閉じられずにいた。

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