☆流れ星にネガイを☆
「あの」
「っ!?」
声を掛けられて男の全身を上から下まで舐めるように見ていた事気付く。顔に熱が集まり急に恥ずかしくなって男から目を外した。
外した…はずなんだが。
男は何故か私の目の前に居る。
先刻の場所から私の目の前に移動してきたのか。
「俺の事…視えるの?」
突然何を言い出すんだコイツは。
何か言いたかったが、あまりに真剣な顔だったからなんだか言いにくい。
「…うん」
簡単に答えると男は顔を強張らせ私に抱き着いてきた。
………は?
「触れられる!触れられてる!視える!視られてる!」
耳元で訳の分からない事を大声で繰り返す。
でも今はそれどころじゃなく、私は必死に男を離そうともがく。
だって私は生粋の日本人だからこんなスキンシップは慣れてない。
しかも異性と抱き合うなんて幼稚園と共に卒業しているわけなんです。
てかこれって痴漢!?
コイツは変態でも変人でもなく変質者だったのか!?
もう悲鳴を上げてしまおうとしたら男はパッと私から離れた。
私は男から数歩離れる。いつでも逃げ出せるよう足に力を入れる。
足の速さに自信はないけど近くの家に助けを求めれば助かるかも。
しかし男はそんな私を綺麗な顔に笑顔を張り付けて見ていた。
嬉しくて嬉しくてたまらないとでもいうような…。
その笑顔を不思議に思いながら私の頭の中で警報が鳴る
コイツ危険だ。
だがそれで済まなかった。
その危険人物は私の中の自分の存在をさらに酷く上塗りする発言をしだした。
「俺のご主人様ですね!?」
ブラックリストどころじゃない。
ダークリストだ。
「懇願者様でしょ!?良かった!逢えなかったらどうしようかと」
懇願って…。
にしてもどうしてこの男はこんなに嬉しそうなんだろ。
男はまた深々と頭を下げた。
ただし今度はしっかりと私の方を向いて。
「改めてどうもはじめまして!俺は貴女の願いを叶える星!流れ星K34号です!」
男は先刻言っていた事を繰り返し顔を上げた。
今度はしっかりと笑顔が見えた。
「な…流れ星?」
妙に気になる所を聞いてみた。
「はい!流れ星K34号です!よろしく!」
何かの会員だろうか。
だったら今までのは勧誘に…ならない。
明らかな痴漢行為だもの。