50代のビキニ
ボクだけの青い海
小さな町の小さなギャラリーに吸い込まれた。

ギャラリーって言ったって、いたって素朴なトコロ。

経営している奥さんも素朴であったかいおばさん。

たまたま通りがかっても開いてなかった。
(ずっと病気で閉めていらしたとのこと)


今日は、玄関先で奥さんと少し年配のご婦人が楽しそうに話していた。

ご婦人は、帰るところだった。

「その頭の飾り、お似合いですね。コートも素敵です!!」
奥さんが誉めた。

後で、奥さんに色々お話を聞いて私、すっかりほっこりしてしまった。 いい刺激をもらった。

さっきのご婦人のコートはお母さんが50年前に作られもの。
彼女が毛糸の刺繍をほどこして着ていらしたのだ。

素敵だなぁー。

お母さんが作ったコートが今もずっと娘と共に生きているのだ。

コートもさぞかし喜んでいるに違いない。

今日のギャラリーのテーマは「色と時間」。

何人かの作家さんの作品が展示されていた。

毎朝、窓から見える生駒山の風景を描いた人。毎日、微妙に変わって行く風景の形、色。

毎日、一句俳句を書いた人。

毎日、根気よくたたいて作った鉄の食器、スプーン、アクセサリー。

時計に支配なれない自分で動かす時計。

などなどいっぱい展示されていた。


小さな額があった。

これは、(この前まで展示されていた)引きこもりの青年が書いた詩に、感動した他の作家さんがそれをイメージして創くられたもの。

流木の砂色の額にガラスが重ねてある。
中は青く塗られ下の方に砂が入っていた。

額を持って揺すると、砂が海の上をあっちこっち遊ぶ。

手に持って揺らしてみた。

ほんとだ!
私だけの海だ。
潮騒の音が聞こえる。

誰かの詩に誰かが感動して、こういう形のあるものを創った。
それを、私や誰かさん達が見て、触って感動する。
そして誰かに伝えたくなる。


なんて素敵なことだろう!

「毎日、少しの時間でも
毎日、一つのことを楽しんで続けて行くと、
やがて一つの大きな、すてきな作品になるんですね。
私も何かやろうと思うんです。」
と、奥さんが言われた。


私は大きくうなづいた。


二人でニッコリ笑った。
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