50代のビキニ
冬のたこ焼き
いつかの冬。

雪のちらつくとても寒い日だった。

夕方の6時でも、冬だからね。 暗い!

バスを降りると、「あっ!たこ焼き屋さんだ!」

赤ちょうちんとたこの人形をぶら下げた、たこ焼き屋さんの屋台が目に飛び込んで来た。

ここのたこ焼きは8こで500円。

とっても美味しいのだ!!

たこ、大きい。 だしバッチリ。 鰹節だって大きい花鰹だよ。


あー、たこ焼き食べたーいと夢見ていても、やってる日とやってない日がある。

肉まんがある時、ない時ではないが「ヤッター! 今日はある時!!」

私は、迷わず一直線にたこ焼き目指して突っ走る。

「あぁー、今日は開いてて良かったー!!
ここのたこ焼き、とても美味しいですね。」


焼いてるおじさん(本当に、この人やくざやさんかしら?)、人が良さそうなおじさんがニカッと嬉しそうに「ありがとうございます」と笑った。

おじさんは、手際よく注文通りマヨネーズソース、鰹節多め、幅の広い短冊ののりをふりかけて紙に包んでくれた。


そして「お客さん、すいません。袋を忘れて来たのでこのままでもいいですか?」と済まなさそうに言った。



えーっと思ったが「いいですよ。家、近いから(本当は近くない)」と私。


ソースたれないかなぁ~と心配しながらコートの中で抱えた。

熱い!

外が寒いので、やがてあったかーい!に変わった。

なんだか親鳥になったみたい。

たこ焼きの赤ちゃんを抱っこしている、親だこ!?


大事に、だいじに抱っこして小走りで帰った。
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