青春の風
 
優しい言葉に、思わず顔を上げるとさらに優しい笑顔を見せる。



「痛かったか?」



それは驚きを隠せなかった私に、後頭部を軽く叩いたから。



本当に軽くだったので、まったく痛くなどなかった。



「いえ……」



「悪かったな、思わず手が出た。弟をいつも殴ってるからくせで」



「痛くなかったですから……」



そう言った私にどうやら、今日は表の顔で通す気らしい樹先輩が呟いた。



「女の子なのに、マジで悪かった」



この日、どこまでも簡単な私が、樹先輩をさらに好きになったことを誰が責められる?
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