青春の風
誰かに抱きしめられると幸せだってこと、樹先輩に教えてあげればいいんじゃないの?
「そうですね、少し頑張ってみても……」
そう呟いた私を放しながら、青空先輩が悪戯に笑う。
「でも、今日だけは俺の彩乃君だよ」
なんだかよくわからないけれど、まあ今日だけはいいかと思った。
小さな幸せを教えてくれた青空先輩。
もう一度手を繋ぎ、歩き出すその背中に着いて行きながら、青春がなにか少し見えた気がしていた。