青春の風
震える身体で涙を流す私の横で、樹先輩が強く私の手を握っていた。
私が泣いたところでもう、青空先輩は帰ってこないとわかっていても、それでも溢れる涙を止められなかった。
あの日、階段で流した涙を超える涙を私は流した。
樹先輩に握られる手は、海岸を歩いた青空先輩の手を思い出す。
温かく優しい手だった。
本当はたくさんの夢を掴みたかった手。
その手は今はもう冷たく動かない現実に、胸が押し潰されそうになる。
それでもなんでも、無情な現実は青空先輩の遺体を葬儀屋が引き取っていく。
葬儀会場が決まり、お通夜と告別式の日が決まる。
そんなに急がなくてもと思うのに、現実は待ってはくれなかった。