ラブ☆バカリズム
討論している女の子を遠くから眺めていると、体育のおじさん先生が額に青筋を浮かばせてあたしの隣に立った。なんか今にも血管破裂して死んじゃいそうだな、ってくらいにピリピリしている。
「お前等うるさい! 湯口、保健室まで連れてってやれ。他の奴らはバスケ続行!」
すぐ隣で叫ばれて耳がキーンとする。背低いくせに声だけは大きいんだから。
「ちぇー」
「湯口さん、ずるーい」
「沙希かよー」
女の子達が口々に文句を言いながらバラバラと散らばっていく。そんな中、沙希がニコニコと笑いながらあたしの手をとった。
「じゃあ行こっか」
「う、うん」
体育館から保健室へと廊下を歩いている最中、沙希はいつもよりも数段回上機嫌で鼻歌まで歌っている。そんなにサボりたかったのか。
「なんで体育サボりたいの?」
あたしがそう聞くと、沙希はいきなり鼻歌を辞めて呆れた顔でため息を大きく吐いた。
「サボりたくてわざわざ保健室に行くわけないでしょ。薫先生に会いたいの」
沙希はさっきの呆れた顔とは正反対の輝いた目でそう言った。その瞳はもう遠くを見つめている。薫先生ってなんか聞いた事があるんだよなァ。んー……と、確か……。
「あァ! 沙希の憧れって言ってた寺脇薫先生?」
見た事はないけどよく名前は聞く。だいたいは、朝礼の時に薫先生がうつらうつらしてて可愛かった。とか、寺脇先生と廊下ですれ違っちゃった。とか、いつも女の子が騒いでいる。沙希もその中の一人で、憧れの人だとか言ってたのを思い出した。