ラブ☆バカリズム
そんな事を話しながら歩いていると、いつの間にか保健室に着いていた。
コンコン
廊下に乾いた音が響く。保健室からの返事はない。
「入っちゃっていいよね? ……ってなんで後ろに隠れてんの?」
後ろに振り返ると、沙希があたしの背中に隠れていた。
「だってあの薫先生に会えるなんて心臓がもたない!」
そう言う沙希の顔は真っ赤になっている。恋する乙女って大変なんだな。てか、心臓やばいなら来なければいいのになんて思っちゃう。
「失礼しまーす」
あたしはきゃーきゃー騒いでいる沙希を放置したまま、保健室のドアを開けた。独特の消毒液の臭いが鼻を掠める。中を見回すけど、誰もいないみたいだ。
「沙希、寺脇先生いないよ」
今だにキャーキャー騒ぐ沙希に声をかけると、え? と驚いた声を出して、あたしの背中の後ろで周りを見回した。
「なーんだ、ドキドキして損した」
一気に気が抜けたのか、沙希が10歳老けた様に見える。どんだけ緊張してんだか。
「じゃああたし体育に戻るから、絆創膏貰って帰ってきてねー」
寺脇先生がいないとわかった沙希は怠そうに手を振りながら、保健室から出ていった。薄情なやつめ。本当にあたしの心配じゃなくて、先生に会いたかっただけなのか。