Air Clock
第1章 アマノジャク
「今日はね、○○くんのママとお食事会なの!」
「そう。いってらっしゃい」
仕切りに鏡を覗き込み、化粧をチェックしているこの人は、あたしのママ。
大丈夫だよ、そんなに確認しなくても。
「モモ~、どっちのコート着たらいいかしら?」
彼女は今日、あたしの弟のママたちと食事会らしい。
「右にすれば?」
あたしの弟は、有名セレブ中学の二年生。
あたしと違って、頭が良くて、ルックスもそれなり。
「やっぱりそう思うわよねー!」
ママはそんな弟が、ご自慢で仕方ない。
あたしの学校の保護者会にはあまり顔を出さないが、弟の学校のことになると音楽会にまで参加するほどの、熱の入れよう。
弟の友達はみな、超有名ホテルの御曹司とか、とにかくレベルが違うから、ママは必死にその波について行こうとしている。
所詮あたしたちなんかとは、住む世界が違う人間なのに。