どこまでも、蒼く


騒がしい廊下を俺は沈んだ顔を浮かべて、一人歩いていく。
下駄箱にきたとき、後ろから足音が聞こえてきた。


『…嵐、帰るの?』



陽菜だと期待する俺。
だけど陽菜ではない。
この声は…千夏だ。
いつもより元気がない。

俺は下駄箱からローファーを取り出して、千夏を見下ろした。


『うん。帰る。』


『寂しいよ。帰らないで…』



すると千夏は自分の欲望をコントロール出来なくなったのか、歩みより、俺にそっと体を寄せた。
なにかにすがるような…甘えるような…。

千夏の体温が学ラン越しに伝わってくる。


俺はこの時気がついた。陽菜のように胸が弾まない…と。
そういうことか。
これが大きな違いなのだ。

嫌じゃないんだ。
だけど心臓は無反応。


『…ごめん、帰るよ』


ゆっくりと俺は千夏を自分から離した。
そして靴を履き替えて、千夏の期待を裏切り、校舎から姿を消す。



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