どこまでも、蒼く
慶汰は怒っているとき、煙草を吸う。
普段はあまり吸わないが、怒っているとき、苛立っているときはいつもそう。
だから簡単だ。
『早く言えよ』
眉間に皺を寄せて慶汰を睨むと、慶汰はくわえていた煙草を灰皿に押しつぶし、口を開いた。
『お前さ、いい加減ありさと仲良くしてくれねぇ?』
…なんだよ、それ。
くだらない内容。
聞いて損するくらいだ。
『なんで?』
『ありさが悩んでるんだよ。お前の態度が冷たいって。今日だって泣いてたし』
だから…なに?
目を閉じ、冷静に対処をしようとするが、無理のようだ。
この煙草の匂いも嫌いだし、慶汰の話も嫌だし。
正直、逃げたい。
『別に関係ねぇだろ。話はそれだけ?』
立ち上がり、煙草の匂いで広がるリビングから出て行こうとしたとき、慶汰が怒鳴る声が俺の背中に浴びせられた。