どこまでも、蒼く


自分でも分かる。

自分の中が変わり始めているということを。


なぁ、すばる。
俺さ…もう少しで笑えそうだよ。
毎日すばるが言ってくれる目標を、あと少しで守れそうだ。



『ふーん。そっか。まぁいいや。宜しくな!嵐』


『あ、うん。宜しく』


突き出される紘人の手。大きくて細くて…。
この手に抱かれたら、女は幸せなのだろう。
こう思いながら、俺は紘人の手に自分の手を絡ませた。

繋がられた二人の手。
この時、二人に何かが結ばれたのを、俺はまだ知らない。


『嵐、紘人と仲良くしてあげてね。』


『おう、任せろ』


『陽菜そろそろ行くぞ。お前に新しい家教えてもらわねぇといけないから』


こう紘人は言って、陽菜の腕を掴み、俺の前から姿を消した。

心にぽかんと小さな穴が開く。
俺は体の方向を変えて、書店に来た理由を忘れたまま、店をあとにした。


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