どこまでも、蒼く
こんなにも狭い街なのに、こんなにも広いと感じる。
だって、本当に狭い街だったら、小さく零した言葉だって聞こえるはずだ。
だからこの街は広い。
俺は月にあとを追いかけられながら家路へと進む。
無駄に明るいコンビニより、無駄に明るすぎるマンション。
このマンションを見る度、帰りたくない気が増量する。
無駄な明るさは、悪影響だ。
エレベーターのボタンを押した瞬間、今日自分が何故書店に立ち寄ったのかを思い出した。
写真集を見に行ったのに、一切中身を見ていない。
手には取ったのだが、予期せぬ紘人の登場で、見ている暇もなかった。
『まぁいっか…』
エレベーターが俺を運んでいく。
部屋に着き、鍵を開けて中を見ると真っ暗だった。
玄関に視線を下ろすと、慶汰の靴がない。
これを見た瞬間、心の中で喜んだのは間違いないだろう。