どこまでも、蒼く


千夏はこう言って猛スピードで教室から出て行った。
手には夏休みの課題であろう、数学のプリントを持って。


『なんだよ…』


折角憂鬱さを隠して笑顔を振り撒いたつもりなのに。
小さな愚痴を吐いて一人で校門へと行く。


夕方の学校は好き。
なんか落ち着くし…
それにオレンジ色が好きだから。
単純な理由だけど、
それで十分だと思う。


下駄箱の錆びたロッカーを開けると、今日も入っていた。
それは愛の手紙。
今日は2枚。

そろそろやめて欲しいと思いながら、それを持って、ローファーを取り出した。


『嵐はモテモテだな』


『は!?』


すると後ろから怪しい声が聞こえてきた。
とっさに振り返る俺。


そこには八重歯をちらっと見せて笑う、紘人が立っていた。


俺と同じくらいの身長の紘人。
目線は紘人の瞳に向けられる。


てっきり帰ったのかと思っていた。


< 147 / 329 >

この作品をシェア

pagetop