どこまでも、蒼く


静寂が俺たちを包み込む。
紘人から零れ落ちた言葉は、葉っぱから落ちていく滴のように、地面へと落ちていった。


やっぱり紘人は陽菜が好きなようだ。
馨が言っていた《新たな宿敵登場》という言葉は間違ってはいなかったようだ。
でも俺はなぜか焦りを感じなかった。


『…意味わかんねぇ…』

紘人はまた俺を見て不適な笑みを浮かべ、ひょいっとベンチから飛び降りた。


『俺の口からは陽菜が転校してきた理由は話せねぇけど、もしその理由が慶汰だったら、お前は陽菜を諦めるだろ?』



『…諦めねぇよ。だって俺はこんなに…』



陽菜が好きなんだ。
急に止められないさ。
もう進むしか出来ない。

夜の公園に男が二人。
辺りには誰もいない。
紘人の声がよく聞こえる。


『俺だって…お前に負けないくらい陽菜を想ってる。だけど俺はずっとこの気持ちを押し殺してきた…』



その理由は…。
きっと血の繋がった姉弟だから─…。


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