どこまでも、蒼く


その絵は途中書きで、そこで挫折したと語っているようだった。
確かに挫折はしたのだけれど。

でも、なんで陽菜が?

この前、机の中を探ったら、なくなっていたけれど、その時は気にも止めていなかった。

俺が描いたって分からないし、でも…なぜ?


『なんで、陽菜がこれを?』


俺が描いた絵を陽菜が持っている。
そう考えると、急に恥ずかしくなって、陽菜からそれを奪った。

陽菜だけには見られたくなかった。


『…嵐が早退したとき、嵐の机の下に落ちてて、拾ってみたら素敵な絵だったから…』


ぎゅっと握る紙切れ。
その力は強く、破れそうなくらいだった。
けど俺は力を緩めていく。

陽菜が俺の絵を見て《素敵》だと言った。


その言葉が単純に嬉しくて。

俺は褒められたことなんてないから…。



『あり…がと…』



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