どこまでも、蒼く
『行ってらっしゃい!』
営業スマイルでスタッフは俺たちを小さな箱の中に入れた。
そして外から鍵をかける。
中からは出れないようにするのだ。
もう逃げ場所はない。
ってなに逃げようとしてるんだよ…俺。
『嵐…?』
揺れる観覧車。
俺は黙ったまま外ばかり見ているから、陽菜は不思議に思って声をかけたのだろう。
『あ…ん?なに?』
冷静を装って、陽菜と向かい合わせになる。
陽菜との距離は1メートルなんかない。
50センチくらいだ。
近い…。
俺はなんで今更緊張なんかしているのたろう?
何度も陽菜にキスをしようとしたじゃないか。
それに比べたら、近くなんかない。
頭がパニックに陥る。
違う、違う。
これは違う。
この空間が俺をパニックにさせる。
真っ暗な箱の中に俺と陽菜。
そんな俺たちを照らす月と星。
ゆっくりと動く、観覧車。