どこまでも、蒼く


昔の思い出を全て消し去ってもいいと思う。
だって今まで積もってきた過去は、人に自慢出来るほどいいものではなかったから。

それに、昔の女を思い出せと言われても無理なこと。
けどそいつらと過ごしてきた時間は必ずある。


消してもいいかな?

消しゴムで消すかのように。


『…俺も陽菜が初めてにする…』



『え?』



『陽菜が初めてがいい。手を繋ぐのも、キスをするのも…だから…』



目と目が絡み合う。
頂上に運んでいくゴンドラ。
そこには笑う月と無数の星たちがあった。


『嵐…』


『陽菜のファーストキスを奪ってもいいですか?』



お願いです。
俺たちを見ないでください。
この時だけは、二人きりにしてください。

高鳴る心臓も止まってください。



俺はゆっくりと陽菜に近づく。
戸惑う彼女に優しく笑って、瞳を閉じるように命令をした。


…そして頂上へと辿り着く─…



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