どこまでも、蒼く


そのペアリングは彼女のありさとのもの。
もうそれを何年もはめていたのに、今日ははめていない。

慶汰が指輪を忘れることなんてあるのだろうか?四六時中はめているものを、外す時などあるのだろうか?



『慶汰、お前指輪は?』


目玉焼きを口に運びながら、慶汰に何気なく聞いてみる。


俺は見逃さなかった。
慶汰の動きが止まったことを。



『指輪?あぁ、あとではめるよ。てかもうこんな時間じゃん。仕事行ってくる』



慌てて朝食を口に流し込み、最後にコーヒーを飲み干して、慶汰は慌てて仕事へ行く準備をし始めた。


直感で分かる。
怪しい。怪しすぎる。


だけどこの時はあまり気にも止めていなかった。


『なぁ、慶汰…』




俺が陽菜に対してついてる嘘は、いつバレるのだろうか?
そんなことを毎日思っていた。



『何だよ?』



『蒼井陽菜って人知っているか?』




慶汰が俺の兄だという真実を背負いながら、陽菜と付き合っていく自信は日に日に薄れていく…。



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