どこまでも、蒼く
『他になんかあるのかよ?』
かじかむ手は、俺の心のようだった。
いつか凍ってしまい、手の施しようのないモノに変わるのだ。
すると紘人は真剣な瞳で俺の顔を見る。
そして白い息を吐きながら、こう言った。
『いいか?憧れが好きになるかもしれねぇんだぞ?お前は知ってんのかよ?陽菜がどれだけ慶汰のことを憧れだと思ってんのか』
なにかに気付かされる俺。
確かに俺は陽菜がどれだけ慶汰のことを憧れだと思っているのか知らない。
俺が女優と恋がしたいと思うくらいだと思っていた。
だけどそれは理想の恋。だから当然陽菜も俺と同じくらいだと思っていた。
『…そんな凄いわけ?』
『それは自分の目で確かめたら?』
紘人の言葉が北風のように冷たい気がする。
『けど別にいいじゃん。慶汰には彼女がいるんだし、それに陽菜には俺がいんだろ?』