どこまでも、蒼く


蛇口を捻れば、温かいお湯が流れてくる。
それにゆっくりと髪の毛を濡らし、シャンプーをつけて泡立たせる。
広がる、シャンプーの香り。
このシャンプーも慶汰と兼用だ。

俺が買ってきたやつを慶汰が勝手に使っているだけ。

別に嫌ではないけど、心からは思っていない。

そんなことを思いながら、痛んだ髪の毛を洗っていく。


…風呂から出た俺の体から湯気が立ち上っている。
その湯気はあちらこちらに遊びにいき、鏡などに付着をし、水滴をつくる。
これが湯気の正体。


曇った鏡を手で拭き、写った自分の姿を見た。
ぺたんこになった髪の毛。
滴り落ちる雫。
その奥には世界を憎むような俺の瞳が存在していた。


『…生まれてこなければ良かった…』


どうして母親は俺を産んだ?
もし今両親が生きていたら、俺なんか可愛がらず、慶汰ばかりを可愛がるだろう?


ほら、慶汰はなんでも出来るから。



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