どこまでも、蒼く


『嵐、なに笑ってんの?』


担任が話し終えると、口をへの字に曲げた千夏が俺のところに来た。
そして俺の後ろに回り、後ろから俺を抱きしめる。
背中越しに感じる、千夏の生ぬるい体温。
嫌じゃないから抵抗はしない。
いつものことだ。


『別にたいしたことじゃねぇよ。ただすばるが面白かっただけ』


『すばるはいつも面白いよねー』


『うるさいよ!そこ!』


ふと感じた。視線を。
どこらから強い視線を感じる。
ゆっくりと横を見てみると、そこにはじっと俺を見つめる陽菜の姿があった。
その瞳は、まるで可哀想なものを見るような…

昨日の雑草を見つめるあの瞳と同じだった。


なんでそんな瞳で俺を見るんだよ。


見るな…、見るな…。



一時間目の授業は、現代古文だ。
この授業も俺は真面目に聞いてはいない。
千夏は先生の姿を確認すると、俺の背中から離れ、自分の席に戻って行った。



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