王子と姫が出会いました。
部屋から出て来た王子君が手にしてたのはあたしのお泊りセットだった。



「忘れ物」

「…………」

「今までありがと。楽しかった」



そう言ってバッグをあたしの足元に置いてまた部屋に戻った…



完全に…終わったんだ…。



「俺…送るから…」

「大丈夫っ…しぃちゃんに勘違いされちゃったら…困るから…」

「だけど…」



靴を履いて玄関を出た。



また開いたドアから出て来たのは瑞紀君で。



「行くぞ」



どうやら強制的に送ってくれるみたい…。



初めて瑞紀君とあたしの家までの道を歩く。



あたしはただ涙が止まらなくて胸が苦しくて…。



瑞紀君はなにも言わずにただ一緒に歩いてくれた。



「よくわかんねぇけどさ…、王子は姫じゃなきゃダメだと思ってるから」

「瑞紀…君っ…」

「少し離れんのもアリなんじゃねぇの?うん、俺はそう思う」

「はいっ…」

「よし、泣くな」



これが王子君だったらよかったのに…なんて思うあたしはやっぱり性格が悪い…。



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