王子と姫が出会いました。
【姫】



『アイツのことは俺が忘れさせてあげるから』



コウ先輩にそう言われ、あたしはそれを受け入れた。



先に卒業したコウ先輩は頻繁にあたしをデートに誘い、すごくアピールされた。



こんなに諦めが悪い人が初めてで、あたしが折れたって言った方が正確かもしれない。



王子君に指輪を捨てられたあの日、完全に終わった…。



王子君のことを好きでいるのが辛くて…。



やめたかった。



どれくらい泣いたかわからない。



笑えなくなって、苦しくて、頭がおかしくなりそうだった…。



あたしが悪いのはわかってる。



それで嫌われたってことも。



でもいつまで耐えたらこの気持ちはなくなるの?



「姫、おいで」

「はい…」

「ホント、カワイイ…」



そう言って抱きしめてくれるコウ先輩が、王子君に代わってしまえばいいのに…。



やめたいのに未練がましく王子君を想ってる…。



忘れたいのに出て行かない…。



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