アネモネ*~風、君を愛す~
「明日また来ます」
「遠いのにごめんなさいね。
本当にごめんなさい」
「紗那に会えるまで、
何度でも来ますから」
ドアの向こうから、
母たちが話す声が聞こえる。
皆に心配されることも、
アタシを哀れんで見る皆の目も、
この時のアタシには苦しみでしかなかった。
「1人になりたい」
~8月20日~
皆が寝静まった夜。
アタシは、
{探さないで}とだけ一言メモを残し、
家を飛び出した。