アネモネ*~風、君を愛す~


涙が枯れるまで泣いた。

溢れた涙は止まることを知らない。

そんなアタシを抱き締めたまま、

アツは優しい手で、

何度も何度もアタシの髪を撫でた。


「…ック、ック」


「少しは落ち着いたか?」


「ごめんなさい。
アタシ…」


「大丈夫だから」


アツはアタシをソファーに座らせると、

温かいココアを淹れてくれた。

この時に飲んだココアの味は、

一生忘れない。

温かくて優しい味がしたんだ。


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