初恋
初恋



……………


もうやだ!


もう絶対別れるっ!






荒々しく古いドアを開ける。

ガラガラッと大きな音が響くが、そんなの無視してローファーを脱ぎ捨てた。

床が抜けるんじゃないかというくらい軋む廊下を駆け抜けて、改築した二階へ駆け上がる。

バタンと大きな音をさせて部屋へ逃げ込む様に入ると、そこには静かな空間があった。


…急に視界が歪み、奥の方から涙が込み上げる。


「ふ…」


ドアにもたれかかったまま、唇を噛み締める。




『俺、音楽も大事なんだよ』





「だからっていつもいつもほっとかないでよっ!」


頭の中に響くあいつの声に向かって叫び、鞄を壁に投げつけた。

壁に貼ってあった数枚のツーショット写真が衝撃で落ちる。


それを見て益々悲しくなり、あたしはその場にへたりこんで泣いた。



音楽が大事なのもわかる。

あいつが音楽をやってる顔も好きだ。

でも、じゃああたしは?



…あたしと音楽とどっちが大事なの、なんてこと、死んでも言いたくないのに。






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