初恋
ピィーッとか細い音が響く。
綺麗に作られた葉笛は見事に音を出していた。
祭囃子を真似て演奏する廣に、あたしは「うまいうまい」と笑う。
「あたしにも吹かせて」
「真友には難しいって」
「それくらいできるもんっ!ね、吹かせてよ」
廣のシャツの裾を引っ張りながら駄々をこねるあたしを見て、「しょうがねぇなぁ」と笛を口元から離した。
てっきりその笛はあたしの口元にくるかと思ったが、あたしの口元に来たのは廣の唇だった。
不意討ちの口付け。
急すぎて、目を閉じることも忘れた。
…そんなあたし達の上で、パァンと夏の風物詩が花咲いた。
ゆっくりと離れる廣。
そのまま顔を空に向けた。
「今年も綺麗だな」
二発目の花火が廣の顔を照らす。
あたしは火照った頬を冷ますように夜空を仰ぎ見た。
三発目の花火が上がる。
二人の間に鳴り響く。
そっと乗せた掌を、廣の手が優しく包んでくれた。