月兎の瞳が蒼い理由


「空耳よりもヤバイなこりゃ。幻聴とわww俺あの子のコト目茶苦茶好きだったんだなー」


しみじみと呟いてみるが、・・・分かっている。


これは現実で、幻聴なんかではない。


【現実逃避お疲れ様。逃げてばっかいるからフラれるんだよ】


可愛い見た目に反して言うことはなかなかに辛辣なウサギだ。


ウサギを抱き上げ目線を合わせてから「うっせーウサギ」と小さくデコピンをかましてやると、齧歯類特有の歯でカブリとやられてしまった。


やりよるな、ウサギ。


大きな蒼い瞳で俺を睨むウサギは、俺の指から歯を離すとフンッとそっぽを向いてしまう。


妙に人間味溢れるウサギだな。とか感心しつつ


「お前迷子か?」


と問い掛けてみる。


俺の質問に怪訝そうにしつつ渋々肯定するウサギに俺は満足して、思わず口元を緩める。


「行くあてはあんのか?」


【無いよ、そんなもの。】


「家は?」


【もう無い】


なんて好都合。


ウサギには悪いが俺は本気でこの時そう思ってしまったんだ。

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