あたしと彼と白いキャンバス
先輩の頬の筋肉がぴくりと引き攣ったのを、あたしは見逃がさなかった。


「そう」

「喧嘩したって言ってましたけど…怪我はないんですね」

「あるよ。服の下に隠れてるだけ」

「そうですか」

「…新太郎からなにか聞いた?」

「…なにかってなんですか?」


あたしの問いに対する先輩は答えは、沈黙だった。




しばらくして、車が停車する。


「――ああ、もう着いたか。小早川さん、ここが俺の家」

「う…っ」


車を降りたあたしは、目の前に広がる光景に絶句してしまった。
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